STOを不動産投資に活用|STOの概要とメリット・デメリット
しかし、そもそもSTOとは何なのか、よく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
STOというのは、セキュリティトークンを利用した新たな資金の調達方法のことを言います。
今回は、STOの概要と、STOを不動産投資に活用するメリット・リスクについて解説します。
STOにご興味がある方、STOと不動産投資との関係性について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. STOとは
まずはSTOの仕組みについて解説します。
(1) STOの意味
STOはSecurity Token Offeringの略で、セキュリティトークンと呼ばれるデジタル証券を発行して資金調達を行う方法です。
セキュリティートークンとは、ブロックチェーンの仕組みを利用してデジタル化された、法令上の有価証券のことです。
ブロックチェーンはネット上の取引を過去から順に鎖のようにつないで記録していく仕組みで、セキュリティトークンのセキュリティを保つ役割があります。
つまり、セキュリティトークンは投資物件に関する契約情報や書類、配当金などのデータを全てブロックチェーン上に保管することで、安全性を保っています。
(2) STOの仕組み
投資物件に出資することで、投資家はセキュリティトークンを受け取ります。
セキュリティトークンを受け取ったら、往来の投資と同様に、運用益を受け取ったり、売却によって収益を得たりすることができます。
STOによって投資家はいつでもブロックチェーンに記録された情報にアクセスすることでき、往来の方法よりも簡単に投資を行えるようになります。
情報が公開されることで取引が簡易に行えるようになる一方で、心配なのが情報の流出や悪用です。
STOを取り扱うためには、金融庁から認定された日本STO協会の規約を守ることが求められており、規約によって取引の安全性や投資家のプライバシーが保護されています。
2. STOと不動産投資の関係性
STOは不動産投資分野での活用が注目されています。
海外ではSTOによる不動産投資が日本よりも活発に行われており、実際にアメリカではコンドミニアム投資においてSTOが活用されています。
多額の資金を必要とするコンドミニアムの所有権を、STOを活用して小口化することで、少額からの投資を可能にしています。
このようにSTOを不動産投資に活用するメリットについては、以下で解説していきます。
3. STOを不動産投資に活用するメリット
ここまでSTOと不動産投資の関係性について解説してきました。
次に、STOを不動産投資に活用する4つのメリットを解説します。
(1) 不動産所有権を小口化
STOによって、往来では難しかった不動産所有権の小口化が可能になりました。
STOによる不動産所有権の小口化によって、少額で不動産投資ができるようになり、今後幅広い投資家からの資金調達が期待できます。
多額の資金が必要になる不動産投資を少額で行えるようになったことで、投資家からの資金調達がしやすくなり、不動産投資市場が活発になるとメリットがあると言えるでしょう。
(2) 24時間いつでも取引可能
STOで不動産投資を行った際の取引の記録はすべて、ブロックチェーンに保管されています。
そのため、金融商品を取り扱う証券取引所とは違い、24時間いつでも取引が可能です。
往来の不動産売買取引は、売買成立した日から決済日までタイムラグが発生しますが、STOによる不動産投資においては即時に決済が行われます。
そのため、不動産売買取引の流動性が高まり、今後市場がより活発になると予測されます。
(3) 手続きの軽減やコストの削減
STOによって、往来の不動産投資取引で必要だった書類作成など手続きの軽減や、手数料などコストの削減が期待されています。
ブロックチェーンに保管された不動産投資情報によって、運用益や家賃収入の受け取りなどを自動化することが可能です。
その結果、手続きの軽減や、両替や手数料などコストの削減につながります。
(4) 安全性が高い
STOはブロックチェーンによりセキュリティを保たれているため、不動産投資に関する情報を盗まれたり、改ざんされたりといった可能性は低く安全性の高い仕組みだと言えます。
1-(2)で述べたように、STOを取り扱うためには金融庁から認定された日本STO協会の規約を守ることが求められており、これによって取引の安全性や投資家のプライバシーが保護されています。
4. STOを不動産投資に活用するリスク
STOを不動産投資に活用するメリットがある一方で、リスクもあります。
次にSTOを不動産投資に活用するリスクについて解説します。
(1) プライバシーが侵害される恐れがある
ブロックチェーン上に保管されている情報は、手数料の軽減やコストの削減などのメリットがある一方で、誰でも情報や取引内容を参照できるという点にリスクが存在します。
投資家の個人情報もブロックチェーンに保管されるので、セキュリティやプライバシーが侵害される恐れがあるのではないか、とも言われています。
現在は1-(2)で述べたように、日本STO協会の規約によって取引の安全性や投資家のプライバシーが保護されていますが、今後新たな仕組みが出てくる可能性もあるので注意しましょう。
(2) 審査が厳しく参加のハードルが高い
STOの商品は日本STO協会の審査に通ることによって商品として認められるため、審査に通るまでのハードルが高く新規参入が難しいです。
商品だけでなく投資家についてもSTOの安全性を保つための審査が厳しく、STO市場に参加するハードルは高いのが現状です。
(3) 取引できる商品が少ない
STOは手続きの軽減やコストの削減を考慮すると魅力的ですが、新しく始まったばかりの仕組みです。
投資先にとっては、STOに参入する際にデータを編集したり人員を配置したりなどの初期投資が必要です。
取引できるSTO商品が少ないと投資家を集めることができず、結果的に市場の流動性が低くなってしまいます。
そのため、投資家に魅力的な商品をつくりだすことが今後重要になってくるでしょう。
(4) 取引の規制が標準化されていない
現在、SBIホールディングス株式会社と株式会社三井住友ファイナンシャルグループが共同で設立した、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社がSTOのプラットフォームを作成中です。
2022年春に取扱い開始を目指しており、STO商品の取扱いも今後行われる予定です。
しかし、現状あくまでグループごとの取り組みにとどまっており、プラットフォームをまたいだ連携ができるよう今後データや規制の標準化が必要になってくるでしょう。
5. STOを活用した不動産投資商品の事例
最後にSTOを活用した不動産投資商品の事例をご紹介します。
(1) 葉山の古民家宿づくりファンド
https://hello-renovation.jp/renovations/6814
2019年に国内初の一般投資家向け不動産STOとして、株式会社エンジョイワークス社の「葉山の古民家宿づくりファンド」が実施されました。
目標募集額の1,500万円を達成して、ファンドの募集は終了しています。
葉山の古民家宿づくりファンドでは、投資をしたあとにセキュリティトークンが発行され、投資家へ葉山の空き家の所有権が譲渡されます。
(2) 不動産クラウドファンディング:ビットリアルティ
ビットリアルティは不動産の所有権を小口化してファンドを設立し、ネット上での投資を可能にしたサービスです。
ビットリアルティにより、個人が非上場の不動産投資商品に直接アクセスすることができるようになりました。
今後STOが普及するにつれて、不動産投資へのクラウドファンディングもさらに活発化することが期待されるでしょう。
6. まとめ
今回は、STOの概要と、STOを不動産投資に活用するメリット・リスクについて解説しました。
STOを不動産投資に活用することで、新たな市場や取り組みが生まれる可能性があり、今のうちからSTOについての知識を持っておくことは、投資チャンスを逃さないためにも非常に重要です。
この記事を読んでSTOを活用した不動産投資に興味をもった方は、今後もSTOと不動産投資の取り組みに注目していきましょう。
【参照サイト】
・セキュリティトークンの概説と動向(日本総合研究所)
・トークンを活用した不動産投資の可能性と法的枠組み(TMI総合法律事務所)
Asset Oceanが根本的に解決を目指す課題は、海外不動産投資のハードルを下げ、市場を活性化させることです。