ブロックチェーンが不動産業界にもたらす5つの影響と国内事例3社
ブロックチェーンの仕組みを不動産で活用することによって契約の簡素化や情報の透明化などを図ることができ、実際にブロックチェーンを不動産に活用したサービスも開始されています。
今回は、ブロックチェーンが不動産業界にもたらす5つの影響と、ブロックチェーンを不動産に活用した国内事例3社について解説します。
ブロックチェーンの概要や、ブロックチェーンが不動産業界にもたらす影響について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. ブロックチェーンとは
まずはじめに、ブロックチェーンの仕組みと活用されている分野について解説します。
(1) ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンとは、高度な暗号化技術によってネット上の取引を1つのブロックにまとめて記録し、鎖のようにつないでいく仕組みです。
ブロックチェーンの強みのひとつに、分散型の管理システムを構築できる点が挙げられます。
往来のシステムは、1つのサーバーである中央管理者がすべての取引を管理する中央管理型でした。
一方ブロックチェーンは中央管理者が存在せず、取引のデータをユーザー同士が管理し共有することで、分散型の管理システムを実現させました。
そのためブロックチェーンではユーザー同士が直接取引を行うことが可能です。
図1:ブロックチェーン技術の活用状況の現状に関する調査研究(総務省)
(出典元URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r02_07_houkoku.pdf)
(2) 活用されている分野
ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨を実現するために作られた仕組みです。
現在では仮想通貨をはじめとした、メタバース、NFTなど暗号資産の分野において、ブロックチェーンはデータの改ざんを防ぐ役割を果たしています。
2. ブロックチェーンと不動産の関わり
次にブロックチェーンと不動産の関わりについて解説していきます。
(1) 取引
ブロックチェーンは不動産売買の取引において活用できます。
往来の不動産売買取引では、書類の取得や押印、銀行への訪問や物件立ち会いなど契約までに多くの手続きが必要でした。
ブロックチェーンを活用した不動産売買取引では、契約に関するやり取りをすべてデータ上で行うこと可能です。
そのため、ブロックチェーンによって不動産売買取引が迅速化・簡素化されることが期待されています。
(2) 送金
ブロックチェーンを不動産売買取引に活用することによって、送金がスムーズになると予測されます。
往来の不動産売買取引の場合、一度銀行から引き出してから送金を行うため手数料や手間がかかっていました。
ブロックチェーンはネット上で送金することが可能なので、不動産売買取引における送金手続きがスムーズに行えるようになると期待できるでしょう。
(3) 不動産登記
ブロックチェーンを不動産に活用することで最も有効的だと言われているのが不動産登記です。
現在は国が管理している登記簿によって、不動産の情報が管理されていますが、全国の不動産情報を収集して記録するために人件費など膨大なコストがかかっています。
ブロックチェーンを不動産登記に活用することで、登記手続きの効率化とコスト削減が実現できます。
またブロックチェーンによってデータ共有システムができると、ユーザー間に不動産情報が広く流通することも期待されています。
3. ブロックチェーンが不動産業界にもたらす5つの影響
続いてブロックチェーンが不動産業界にもたらす5つの影響を解説します。
(1) 契約の簡素化
ブロックチェーンではユーザー同士が直接取引を行えるので仲介者が必要なくなり、取引をする際にかかる手数料や手間を大幅に削減することが可能です。
現状、不動産の管理方法は情報収集に膨大なコストがかかり、効率の悪い状態です。
ブロックチェーンが不動産に活用されることによって、情報を管理する機関が必要無くなり、今まで書類取得などにかかっていた手間を削減できると期待されています。
(2) セキュリティ強化
ブロックチェーンは暗号化技術と分散管理システムを組み合わせることにより、データの改ざんや不正ができないようにしています。
不動産売買取引に関するさまざまなデータをブロックチェーンで管理することで不動産情報のセキュリティ強化が期待できます。
(3) 取引の自動化
ブロックチェーンの仕組みのひとつにスマートコントラクトがあります。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上にあらかじめ契約条件を記録しておき、条件が満たされた時点に自動で取引を実行する仕組みです。
往来の不動産取引には契約に関して多くの手続きが必要なうえ、紙媒体の契約書を用いることが一般的でした。
スマートコントラクトを不動産取引に活用することによって契約書が電子化できます。
また契約に付随した不動産登記や決済などの業務を自動化できるので、業務の効率化が図れると言えるでしょう。
(4) 情報の透明化
ブロックチェーンを不動産に活用することにより、現在の不動産業界の課題のひとつである情報の不均衡性を解決し、透明化を図ることができると予測されています。
情報の不均衡性とは、消費者と不動産業者との間に、不動産に関する情報量の差があるということです。
物件に関する情報すべてをブロックチェーン上に記録し、誰でも情報を参照できるようにすることで、情報の透明化が図れると予測されます。
(5) 市場の流動化
ブロックチェーンによって不動産をトークン化することが可能になれば、情報を記録するだけでなく、所有権の移転やユーザー間での取引が可能になります。
不動産のトークン化とは、暗号資産をネット上で売買できる単位に変換することです。
不動産がトークン化されると、契約に関する手続きや手間が削減され不動産の流動性が高まり、結果的に市場が流動化されることが期待されています。
4. ブロックチェーンを不動産に活用した国内事例3社
最後に、実際にブロックチェーンを不動産に活用した国内事例を3社ご紹介します。
① 株式会LIFULL
株式会社LIFULLは、ブロックチェーンによって不動産情報を平準化しています。
空き家や所有者不明の不動産問題の解決に向け、ブロックチェーンを用いた権利移転記録の実証実験を開始しています。
② 積水ハウス株式会社
積水ハウス株式会社は、ブロックチェーン技術を用いて不動産賃貸業務を簡略化しています。
賃貸におけるガス・電気・水道などのサービスをワンストップで完了するために、さまざまな企業と連携しています。
③ 株式会社Zofuku
株式会社Zofukuは、日本の土地や建物などの不動産取引を暗号資産で可能にするサービスを提供しています。
ブロックチェーン技術と暗号資産を活用することで、可能な限りペーパーレスに、安全な不動産取引を行えるような仕組みをつくっています。
5. まとめ
今回は、ブロックチェーンが不動産業界にもたらす5つの影響と、ブロックチェーンを不動産に活用した国内事例3社について解説しました。
ブロックチェーンを不動産に活用したサービスは今後より促進されると予測されます。
まだ運用が開始されて間もない仕組みですが、今後もブロックチェーンが不動産業界にもたらす影響にぜひ注目してみてください。
【参考サイト】
・ブロックチェーン技術の活用状況の現状に関する調査研究(総務省)
・ブロックチェーンの不動産分野での活用可能性(麗澤大学経済学部教授)
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