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オーストラリア 経済と規制のリアル

オーストラリア 経済と規制のリアル
今回は、人口は決して多くはない国、しかし先進国として経済も発展し、物価もかなり上昇しているオーストラリアの経済状況とそれを取り巻く環境を考察していきます。
資源があることは周知の事実ですが、一体どんな構造になっているのか⁉
また、驚愕の空室率を誇る国、どうなっているのでしょう⁉
経済と規制のリアルと題して、オーストラリアの底力を探っていこうと思います。

1. 数値から読むオーストラリア

(1) GDPでオーストラリアを俯瞰する

こちらは、IMFが調査した2022年のGDPランキングです。 オーストラリアは加盟国190か国のうち現在14位。 一方日本は残念ながら、2023年のランキングでドイツに抜かれ4位に転落しました。これは、GDPを測るのに主軸通貨の米ドルに換算されるため、為替の影響も大きいともみられています。とはいえ、加盟国全て同じ条件で米ドルに換算されての比較になっており条件は同じ。1位、2位以降、かなり数字が小さくなりますが、オーストラリアも経済規模が大きいことがわかります。 さらに、オーストラリアはGDPランキング14位中で最も人口が少ない国となっており、なんと一人当たりGDPランキングは世界10位とても豊かな国であることが読み取れます。 人口数の世界1位、2位の中国、インドは、経済規模も大きいのでポテンシャルは感じますが、バランスがまだとれていないのかなと言った印象を受けます。日本はGDP1位のアメリカの約1/3の人口ですが、GDPは1/6となり、残念ながら32位となっています。今年の2024年3月、春闘で大手企業は満額回答で賃金上昇に貢献しそうですが、中小企業も多く存在する我が国、インフレに合わせてどこまで賃金が伸びるか、2024年要チェックです。 【GDPランキング】
GDP(百万US$) 人口(千人) 一人当たりGDP
1 米国 25,462,725 333,288 7位
2 中国 17,886,331 1,412,175 70位
3 日本 4,237,528 125,125 32位
4 ドイツ 4,085,681 83,798 20 位
5 インド 3,389,689 1,417,173 145位
6 イギリス 3,081,871 66,971  
7 フランス 2,780,136 67,971  
8 ロシア 2,244,249 144,237  
9 カナダ 2,137,939 38,930 13位
10 イタリア 2,012,014 58,940  
11 ブラジル 1,920,023 215,313  
12 オーストラリア 1,702,554 26,006 10位
引用ソース:GLOBAL NOTE

(2) 経済推移と失業率

各種グラフは、日本とオーストラリアの各指標のグラフになります。 先のセクションでお伝えした通り、GDPは着実に成長をしており、一人当たりの名目GDPに関しては伸び悩んでいる日本を2000年頃から一気に追い抜きました。

経済成長率の推移

GDPが前年比でどの程度成長したかを表す経済成長率ですが、注目は、日本が大きく落ち込んでいる2009年です。忘れもしないリーマンショックです。 さすがにコロナショックの打撃はあったようですが、世の中の株が大暴落し、不動産価格が下落し、世界的金融危機と言われていたにもかかわらず、オーストラリアは影響がありませんでした。 これは、中国が大型景気刺激策を講じたことにより、資源の輸出が順調であった事も影響しており、以降順調に成長を遂げてます。 ▼オーストラリアのリーマンショックの影響の考察 オーストラリア経済の成長要因分析 : なぜ、リーマン・ショックを超えることができたのか

失業率の推移

先に挙げたように、リーマンショックの影響が軽微で、リーマンショック以降順調に経済成長を遂げています。特にオーストラリアは物価も高いですが、賃金も高い事で知られています。経済成長とともに、人口も増え、安定した雇用が創出されている事が伺えます。昨年後半から高インフレ対策に伴う政策金利の引上げなど金融引き締めによる消費意欲の減退から潮目が変わったようですが、長い時間軸では確実に低下しています。 引用ソース:IMFデータベース  

(2) 各種グラフから見えるリアル

簡単ですが、基礎となる経済指標でオーストラリアの経済状態が見えてきました。 経済は長期間かけて確実に安定して成長し、人口も増加しており、失業率も低下傾向にあります。 次のユニットでは、その力強い経済がどんな産業構造で支えられているのかを探っていきます。

2. 産業構造から考えるオーストラリア

(1) 資源以外の実力を知る

前回の記事にて、オーストラリアと言えば『羊毛』だけだと思っている方が多いのではないかとお伝えしたのですが、これはかなり失礼なお話でした。 ここまでの調査で力強い経済成長に驚かされております。 このように、オーストラリアのGDPの大部分は三次産業により、生み出されています。一次産業と二次産業は依然として重要ですが、経済の成長や変化に伴い、サービス業の割合が増加している傾向があります。 また、オーストラリア経済を大きくけん引してきた鉱業ですが、その割合は意外と少ないようです。しかし、中国依存度が高く中国の急成長に伴い需要が増え、人件費の高騰にもつながりました。2000年から2018年の製造業の割合が減少している点は、この人件費の高騰により、採算の合わなくなった大手自動車会社をはじめとした製造企業が次々と撤退しているからです。 近年の中国の失速により、オーストラリア経済も危ぶまれていましたが、国内の強い消費需要により、サービス業・金融業・不動産業が支える形で今に至ります。また、局地的に人が集まって住んでいることもあり、不動産価格も伸び続けました。 また、オーストラリアの経済が不況に強いのは、日本のように製造業に頼る構造ではなく、産業が程よく分散されていることで、ヘッジされていると考えられます。

(2) 外国からの直接投資はしやすいのか?

オーストラリアへの外資の直接投資も気になるところです。 人口面では、オーストラリアは人口が少なく移民を積極的かつ計画的に受け入れていますが、外資からの投資の必要性があるので、外国企業が投資しやすい環境に整備されています。 オーストラリアへの外資の投資金額は2009年から2019年でほぼ二倍に拡大しており、前年比では平均7.6%と増加しています。国別構成比をみると、 アメリカ(約30%)、カナダ(約14%)、シンガポール(約8%)、日本(約7.8%) 最大の投資元であった中国はオーストラリアの外資規制の強まりなどを受け、割合は低下しています。規制を設けて政府としてバランスをしっかりとり、偏りをなくしているようです。 不動産の購入においてもかつて中国人の爆買い需要により不動産の上昇が止まらなくなり、外国人が中古不動産を購入できないように規制しました。 このように、政治的安定性、経済的透明性、法的な枠組みと規制環境が整っており、先進国として交通網やインフラ、金融サービスも整っているので、外資の投資もしやすくなっています。

(3) バランス第一!

これまで、色々な角度からオーストラリアを覗いてきました。 人口面でも、経済面でも、政府が計画的に規制してバランスを取りながら手綱をひいている事がわかりました。 また、オーストラリアは色々な国とFTAを結んで各国とパートナーシップや協力関係を構築し政治的・安全保障的な関係の強化もはかっております。北半球から離れているせいか、中国、アメリカ、日本、そしてヨーロッパ圏と程よく距離をとっている国だと思います。 資源に恵まれていることもありますが、それだけに頼りすぎず、規制環境を整えバランスを取りながら経済を回していることが分かりました。 次のユニットでは、不動産投資の”バランス”をどう保っているか見ていきたいと思います。

3. 不動産に対してはどんな規制環境があるの?

(1) 投資に欠かせないFIRBの存在

オーストラリア政府が設置した委員会で、外国からの投資を審査し、承認する役割を担っています。この審査は、オーストラリアの国家利益や安全保障に関わる重要な投資に関して行われており、大企業の巨額な投資から、個人レベルの投資まで必ず申請が必要になります。 この規制が2021年から強化され、申請が必要な分野が幅広く増えたそうです。こうしてオーストラリアで外国人が何をしているかをしっかり把握しているんですね。 投資用に購入する物件金額の大小にかかわらず、不動産購入時にも申請が必要になります。申請費用はそこまで高くはありませんが、認識しておく必要があるでしょう。ちなみに、一定の条件を満たすと外国人でも中古不動産を購入することは可能ですが、中古不動産であってもFIRBの申請は必要になります。 ▼FIRBリンク 外国投資審査委員会(FIRB:Foreign Investment Review Board)

(2) 脅威の低さの空室率! 空室に対する法整備もあります

オーストラリア全体の空室率は2024年1月現在、1%を切り、慢性的な住宅不足が続いています。 オーストラリアのその他の州地域全体では、1月に最も低い空室率を記録したのはクイーンズランド州地方部でわずか0.95%で、僅差でタスマニア地方部の0.97%が続いたとPropTracが報じています。 空室率の高い東南アジアからしたら、考えられない驚異的な空室率です。 投資家にとっては有難い空室率ですが、持ち家のない人にとっては深刻な問題となってます。 そんな空室率の低いオーストラリアですが、Vacancy fee returnベーカンシー フィー リターン)という規制があります。決済してから、1年間の間に6か月以上空室にすると、罰金が課せられるという法制度になります。 政府としては、住宅不足が慢性化している為、空室傾向にある投資目的で購入した外国人の物件を積極的に賃貸に出すように促しているようです。また、コンドミニアムの建設を経済の主軸としている国ではないことがここからも推測できます。 ▼PropTrac記事 Where rental vacancy has hit an all-time low

(3) オーナーの義務⁉ テナントの義務⁉

魅力的な空室率をお伝えしましたが、それ以外にもオーナー優位な制度が多く、賃料の未払いが殆どありません。 まず、入居時の審査が非常に厳しいです。そのため、オーストラリアでは週払いで賃料の支払いをするのが一般的となっています。実際には毎週ではなく、月単位でのお支払いが多いようですが、賃料の支払いが遅延すると、テナントのクレジットスコアが低くなってしまい、家が借りにくくなってしまうのです。 ただでさえ、住宅不足なのでクレジットスコアが低いと住むところがなくなってしまう為、必ず支払います。 さらに、契約期間中の途中解除はLease Break(リースブレイク)と呼ばれ、次のテナントが決まるまで、もしくは賃貸契約終了まで賃料を払いつづけないといけません 賃貸中の使い方にも厳しく、使用中は敷地内を良好で清潔な状態に維持する事が義務付けられています。アメリカ不動産ではオーナーの義務である芝刈りなどもテナントの義務です。経年劣化や躯体にかかわる修繕はオーナー負担で修理されますが、テナントがテナントの所有物によって引き起こされた損害の修理はテナントの義務となっています。 また、オーストラリアではオーナーがテナントの入居中に中を確認できる制度もあり、インスペクションと呼ばれています。インスペクションの回数は州により異なり、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、ウエストオーストラリア州では年4回、ヴィクトリア州では年2回です。サウスオーストラリア州では現在なんと毎4週認められていますが、さすがにやりすぎとのことで、年4回になる方向で調整が進んでいます(2024年1月現在)。

4. オーストラリア不動産投資の旅へいよいよ出発です

今回は、オーストラリアの底堅い経済について紐解いてきました。 資源国は世界のインフレに連動して賃金も上昇するので強いですね。人口が少なくても、資源国のアドバンテージを利用し、政府が主導して、国全体で”バランス”をとりながらしっかりと経済成長している姿が見えました。現在考えられるリスクとしては、鉱業輸出のブーム後に内需の消費に支えられてきた部分が大きい為、家計債務超過が懸念されます。そして高インフレに高金利と内需の落ち込みも考えられます。 しかしながら、今のところ経済の落ち込む兆しはなく、不動産価格は上昇し続けております。今後も政府主導の元、バランスを取りながら成長していくと期待します。 また、驚異の空室率! これは、オーストラリア不動産投資の大きな強みです。コンドミニアムの建設が国の経済発展に大きく寄与していた某国とは違います。さらに、テナントの義務がきっちりと線引きされていて、”オーナー天国”と言えるます。 そして、次号は不動産の購入にあたってどのような手続きがあるか、初期費用はどれくらいか?などご案内いたします。 さらに、また驚きの事実が! オーストラリアは”相続税と贈与税”がない国です。これは日本居住者には関係ない話ですが、知ってると知らないとでは大きな違いですので、ご期待ください。 アクセルを踏む準備ができました。エンジン全開でオーストラリア不動産投資の旅へ出発です! ▼前回の記事はこちら 不動産投資前にオーストラリアを知る旅へ出発!
荒木 杏奈
執筆者:荒木 杏奈
Asset Ocean株式会社
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